なーたん大好きだよ

2021年8月2日に悪性リンパ腫による食欲廃絶で亡くなったなーたん。その病状の始まりから治療、虹の橋を渡るまでの記録。

悪性リンパ腫

話は少し戻るが…前回面会に行った時にA先生と今後の治療について話した。その時には以前の病理検査の結果が出ていた。なーたんの病名は…


「消化器型悪性リンパ腫」


最初に診断された「腺癌」ではなかった。

悪性リンパ腫は言わば血液の癌だ。血液の中にあるリンパ球が癌化する。なーたんは腸管にリンパ腫ができたので消化器型。しかしリンパ腫は血液によって運ばれるので一部を切り取れば防げるものではない。


でもA先生は少し希望が持てることも言った。


「2回目の手術で切り取った部分も調べてみましたが…その部分はさほど癌細胞が見られなかったので思ったよりまだ全身には転移していないかもしれません。でも、今後のことを考えて抗がん剤を試してみていいですか。」


抗がん剤…あまりいい響きではなかった。手術を2回もしたなーたんに…大丈夫なんだろうか。副作用で…辛くないのだろうか。


でも少しでも楽になって、ご飯が食べられるようになって長く生きられるなら…という気持ちもあった。


「体力が落ちている今、副作用で亡くなることはないですか?」


と聞くと


「全くないとは言い切れませんが、L-アスパラキナーゼという効き目が穏やかない抗がん剤があります。とりあえずそれで様子を見るというのはどうでしょう」


何が正しいなんて私にはわからない。なーたんに元気になってほしいだけだった。少しでも可能性があるなら。


しかしその抗がん剤にも、なーたんの身体はなんの反応も示さなかった。なーたんの胃腸は動き出さず、緑の胃液を吐き続けた。



元気な頃からよくくつろいでいた私のベッドで

外を見つめるなーたん(6月26日)

食欲廃絶

手術から1週間たっても…なーたんが口から何か食べようとする様子はなかった。水も飲まない。今、なーたんの栄養は静脈からの点滴に頼っている。


何故なのか。A先生も首を傾げる。


私はもしや…ストレスっていうことはないだろうか。あんなにビビりななーたんはだもの。環境の変化についていけずストレスで食欲をなくしてるのでは?と考え始めた。


縫合した腸はしっかり繋がり、一時は腹膜炎を起こしかけてたのを示していた血液検査の値もよくなってきたので


「1回退院させてみてもいいと思います」


A先生が言った。


「家で様子を見てください。」


水も飲まないことによる脱水が心配だったので最初に入院した近所の動物病院で、毎日水分補給の皮下点滴をしてもらうことになった。


10日ぶりになーたんが家に帰ってくる!


まだまだ心配は多いとはいえ、やはりなーたんが目の届くところに戻ってくることが嬉しかった。


入院している間に、なーたん用トイレを念入りにキレイにし、ほぼ毎日吐いてしまうらしいので絨毯のあるところにはレジャーシートやペットシーツを敷き詰めて処理が簡単にできるように用意した。また、以前、災害時、避難の時に猫も連れて行きやすいようにと購入した、大きめのソフトケージを出して落ち着いて隠れられる場所を確保した。


なーたんを迎える準備は万端だ。


病院からなーたんのキャリーを受け取る時、以前とはなにか違うのを感じた。


「軽い…」


すぐにわかるぐらい、なーたんを入れたキャリーが軽かった。当たり前だ。もう10日以上…何も食べてないのだ…。



10日ぶりに帰ってきたなーたん

剃られたお腹が切ない…

獣医学部付属医療センター

大学付属の医療センターに転院してよかったのは、ここにはたくさんのスタッフがいること。獣医学部の学生や研修医、入れ替わり立ち替わりやってくる。

だから入院してても24時間とは言わずとも定期的に見廻りがあるし、休日だって誰か当直がいるらしい。

そのことに私は少し安堵を覚えた。


2回目の手術も無事終わった。面会に行くと以前の病院よりかなり広い入院室で他のケージにも何匹か猫が入れられていた。


2回目の手術を終えたなーたん。まだ振り出しに戻った。早く家に連れて帰りたかったのに。弱々しくこちらを見つめるなーたん。ごめんね。早く帰りたいよね。猫にとって…お家が一番だもんね。ましてや、怖がりのなーたん。どんなに辛いだろう。


「麻酔から覚めるのが早いですね。2回目の手術なのに意外と元気です。もう顔をあげてるし。」


面会に行った時にスタッフの人に言われた。顔つきがしっかりしているせいか…なーたんはいつも実際より元気そうにみえる。だから私は…まだ大丈夫かも、もう少し頑張れるかも、と…なーたんを頑張らせちゃったのかもな。


また、腸がちゃんとくっつくか、それに怯える日が何日か続く。


「かなりしっかり縫合したつもりです。」


腫瘍科の教授であるA先生は言った。


「でも…その部分がガンに覆われていると…くっつかないことはあるので…」


不安な気持ちを抱えつつ…3日が過ぎ、金曜日…仕事の昼休みに携帯を見てみると、医療センターから不在着信が入っていた。


「また…だめだったのか…?」


震える指で電話する。


受付が取り次ぎ、A先生が出た。鼓動が止まらない…。


「まずは縫合したところですが…くっついたようですね。もう大丈夫だと思います。」


悪いことばかり想像していた私は体の力が抜けていくのがわかった。


「ただ…そろそろ何か食べてもいい頃なんですけど…何も食べないんですよ。このままだと衰弱してしまうので首の静脈から栄養の点滴を入れてもいいですか?」


1回目の手術の後から始まった嘔吐が…まだ続いていた。胆汁を含んだ緑色の胃液。


「お願いします。」


ネットでいろいろな猫の闘病記を覗いたけど、だいたいは手術後しばらくすると多少は食べていた。その後病気が悪化して亡くなっている子でも、一度は少し元気になって食べている。


なーたんは手術してから一度も食べていない…何故なんだろう。この疑問はなーたんが亡くなるまでずーっと私を悩ませ続けた。


続く…


我が家でだらけるなーたん(元気な頃)