なーたん大好きだよ

2021年8月2日に悪性リンパ腫による食欲廃絶で亡くなったなーたん。その病状の始まりから治療、虹の橋を渡るまでの記録。

希望

私は感情的に動く人間なので、なーたんの治療にも冷静さを欠いていた、とずっと反省している。何事もきちんと調べてから…冷静に、と思うのだが直感的に動いてしまう。


なので今回は一度家に帰って考えようと思った。


なにせ弱っているなーたんに全身麻酔や開腹手術は不安だった。できることならそれなしに原因がわからないものか…。前回の手術から日が経って…自然に食べ始めたりしないものか…。迷いに迷った。


なーたんを再入院させた日の夕方、医療センターのA先生から携帯に電話が入った。なんだろう…不安が走った。


「あの後、ちょっと麻酔なしでお尻から内視鏡カメラを入れてみたんですよ、実は。そうしたら、腸の手術で切った部分の後ろ辺りに何か…血の塊のような小さいものが詰まってて…それが胃腸の動きを止めていたんじゃないかと…。それを取り除いたので、動き出すかもしせません。」


「え⁉︎」


予想外の展開にものすごく驚いた。


なーたんの胃腸が動くかもしれない‼︎


「ありがとうございます‼︎」


電話を切って私は狂喜乱舞した。娘にも事の経緯を説明しまくりウキウキした。


よかった‼︎よかった‼︎これでなーたん、食べられるようになる‼︎全身麻酔も開腹手術もしなくていい‼︎


それらをしないでいいように、試験的に検査をしてくれた先生に感謝した。


続く…




窓辺のなーたん(元気な頃)

再入院

話を戻します。


退院して、ストレスから解放されて元気を取り戻し食欲も出てくる…という私の期待は粉々に打ち砕かれた。なーたんは何も食べず、何も飲まず、毎日のように胃液を吐き続ける。


体重は減り続け、退院してから日が経つにつれ、私は焦りを感じ始めた。


「とにかく栄養を入れなくては!」


猫は栄養が不足してくると「肝リピドーシス」という肝臓に脂肪がたまり肝機能障害を起こす、という疾患にかかることがあるらしい。私は特にそれを心配していた。

皮下点滴のために通っている近所の病院の先生に聞くと、水分は皮下点滴で補えるけど栄養は静脈点滴に(いわゆる人間の点滴と同じ血管に針を刺して入れる点滴)ではないと補えないので入院が必要だそうだ。


入院…またなーたんと離れる。なーたんに怖い思いをさせてしまう。

でもこのままだと確実に衰弱死だ。何故食べないのだろう。なーたんのお腹の中で何が起きているのだろう。それが知りたかった。それを解決して、なーたんがご飯を食べられるようになってほしかった。


退院してから1週間後…なーたんを動物医療センターに再び入院させることにした。

入院の目的は栄養点滴と食欲廃絶の原因究明。


原因究明についてはA先生からのいくつかの選択肢が示された。


①内視鏡でお腹の中を見る(全身麻酔)

②試験開腹(全身麻酔)

③抗がん剤(少し強いもの)


①はお腹の中が原因じゃない場合意味がない。

②はお腹の周辺全体見られるので手術による

腸閉塞や癒着があった場合はこれが有効

③消化器系のリンパ腫の場合抗がん剤の副作用が強く出てしまうので弱ってしまう可能性がある


どれをやるにしてもなーたんを苦しめることになる。私はその場で決めることはできなかった。


「少し考えさせてください」

と言ってその日はなーたんを預けて帰った。


続く…


娘に無理矢理乗っかって寝るなーたんに(元気な頃)

夫とふーたん

再び余談ではありますが…2年前に亡くなったふーたんは、何故か夫が大好きだった。

夫は基本猫たちの世話はしない。私がいない時に仕方なく餌をあげたり、臭いので仕方なくトイレを片付けたりはするものの、進んでやることはまずない。

なのにいつのまにかふーたんは夫の事を大好きになっていた。


夫が帰ってくるとリビングのドアの前で待ち構え、夫が椅子に座ると膝に登り、夫が通りかかると構って!とばかりにコロンと横たわる。


そんな感じなので夫もまんざらではなく、ふーたんのことは可愛がっていた。ふーたんが病気で亡くなった時はかなりショックなようだった。


しかし、なーたんとは何故か相性が悪いのかお互い近づかない。なーたんも膝に乗ったりもしないし、むしろ警戒するぐらいだった。


なのでなーたんが病気になっても、ふーたんの時ほどの動揺は夫にはなかった。でも、普段よりはなーたんを気にかけているのはわかった。


そんな夫が、なーたんが病気になって泣いてばかりの私にふと言った。


「なーたんは死んでもいいんだよ。」


「えっ⁉︎」


私は耳を疑った。なんてこと言うんだ。

しかしそのあと夫は続けた。


「あちらにはお姉さんのふーたんがいるんだから、あっちに逝ってもなーたんは幸せなんだよ。」


その言葉に泣いた。泣いたけど、その言葉を聞いてから、私はなーたんが遠くない未来に死ぬ、という事実を、少しずつ受け入れることができるようになった気がする。


続く…


台所にいる夫を見つめるふーたん(在命中)


夫とふーたん(亡くなる5日前)