なーたん大好きだよ

2021年8月2日に悪性リンパ腫による食欲廃絶で亡くなったなーたん。その病状の始まりから治療、虹の橋を渡るまでの記録。

絶望

次の日、私は友人と会っていた。高校時代からのその友人に、なーたんの今までの経過と、昨日原因がわかってこれから元気になるだろう、と話し、久しぶりに心から楽しんでいた。


夕方その友人と別れ、家に帰ってしばらくした時、私の携帯が鳴った。動物医療センターからだった。


「あれから様子を見ているんですが…どうもまだ胃腸が動いてないようなんです。」


A先生の声がそう告げた。


血の気が…引いていくのを感じた。


「もうしばらく様子を見てみますが…。週末が明けたらまた今後の話をしましょう」


その日は金曜日だったので土曜日、日曜日は医療センターは面会できない。あと2日は任せるしかない…。


電話を切って…私は…床に座り込んだ。言葉に出来ない感情に、思い切り物を壁に投げつけたい衝動に駆られた。大声で叫び出しそうだった。


「なーたんごめんね。こんなになーたんを苦しめたのに…結局何も解決しなかった…」


なんとなく…わかっていた気もした。1番よかったのは…なーたんをうちにいさせてあげることだと。


猫にとって1番幸せなのは…我が家にいること…。それはふーたんが病気になった時に、以前通っていた動物病院のおじさん先生が言っていた。


「頑張って治療するために入院させるよりも、おうちにいさせてあげて下さい。猫はそれが幸せなんですよ」


わかっていたはずなのに…それでも一度は元気な姿を見たくて…ご飯をモリモリ食べてるなーたんが見たくて…手元から離してしまった。


週末が終わったら…なーたんを家に連れて帰ろう。そう決めた。


続く…

娘が寝るとすかさず寄り添うなーたん(元気な頃)

試験開腹

試験開腹…お腹を開けて、お腹の中で何が起きてるのか、胃腸が止まってしまってる原因はなんなのか突き止める。


これでわからなければお手上げだ。


その日は私は仕事に行っていた。仕事をしながらも祈る思いで早くなーたんのところに駆けつけたかった。


原因がわかって、それを取り除くことができますように。なーたんがまだご飯が食べられるようになりますように


仕事が終わって家に着き、しばらくするとA先生から電話が来た。


「試験開腹終わりました。原因らしきものがわかりましたよ。やはり癒着が起きてたみたいです。癒着は剥がしてもうくっつかないように補強したので…これで胃腸は動き出すと思いますよ」


私はすぐ面会に行くことにした。


原因がわかった‼︎これでなーたん食べられるようになる‼︎安堵の気持ちでいっぱいだった。


面会に行くとなーたんはもう麻酔から覚めていた。


「前回もそうでしたが麻酔からの回復が早いですね」


先生が言った。


先生は少し興奮したように試験開腹の結果を報告してくれた。


腹腔内の手術の後にはよくあることなのだが手術した部分が回復する際に他の臓器と癒着を起こして折れ曲がったり圧迫されたりして閉塞し、通りが悪くなる。

まさになーたんのお腹でそれが起きていて、癒着部分を剥がし、折れ曲がっていたのでもう曲がらないように補強した(どういう風にかは忘れてしまった)、と。


「開けてみて良かったですよー。」


先生も嬉しそうだった。


ただ、良い知らせだけではなくて悪い知らせもあった。膵臓がかなり炎症を起こしていたこと、血液検査結果では糖尿病になりかけていること。これらの治療も並行して行う必要がありそうだ、と。


少し不安にはなったが、それでも希望が持てた。治療しながら、もう少し一緒にいられる。一度は元気になる可能性がある。


帰り際にA先生の助手だという若手の獣医さんが


「本当なら手術中に何かあってもおかしくない状況だったと思いますよ。ほんとに体力のある子ですね」


と言ってくれた。


自分が褒められたように嬉しかった。誇らしかった。


…でも、今となってはお笑い草だ。…褒められていい気になって…ここまでなーたんを頑張らせてしまった自分を叱ってやりたいよ。


続く…



我が家に来た日のふーたん(左)となーたん(右)

落胆

翌日、期待を胸に面会に行った。なーたん少しは食べられるようになったかな。


…ところが、迎えてくれたA先生の顔色がよくない。胸騒ぎがした。


「あれが原因かと思ったんですけどね、あの後も胃腸が動かないんです。」


自分の血の気が引くのがわかった。一気に奈落に落とされた気分だった。


面会したなーたんはケージの奥の方で小さくなっていた。でも首は上げてしっかりとした目でこちらを見ている。


「目力があるから…そこまで弱っているようには見えないですねー。」


先生が言った。


「どうしますか?お腹、開いてみますか?」


一度、可能性を見てしまった私は…やはり原因を突き止めて取り除き、なーたんにご飯を食べられるようになってほしい、と思ってしまった。


「なーたん、もう一度だけ、頑張れる?」


なーたんを撫でながら思った。なーたんは返事なんてしてないのに私はまたなーたんを頑張らせてしまう。


「お願いします…」


手術は2日後の7月1日に決まった。


続く…



無防備ななーたんに(元気な頃)