なーたん大好きだよ

2021年8月2日に悪性リンパ腫による食欲廃絶で亡くなったなーたん。その病状の始まりから治療、虹の橋を渡るまでの記録。

なーたんとふーたん

2匹が我が家にやってきたのは2013年11月のことだった。


この4月に旦那の転勤に伴って引っ越しをし、5年生という多感な時期に転校することになった娘を心配し、彼女の猫を飼いたいという希望をのんだのだ。


2匹を見つけたのは里親サイト。すごい数の情報の中からなぜこの2匹に目をとめたのかははっきり覚えていない。

娘が2匹飼いたい、というので姉妹で里親募集しているのがちょうどいい、と思ったのかもしれない。


我が家にやってきた猫たち。

名前は「なーたん」と「ふーたん」。娘がつけた。

私はもっと「さくら」とか「りん」とか「カッコいい名前が良かったのだが…娘の希望で飼った猫なのでしょうがない…。


最初は家に猫がいることが慣れなくて緊張した私たちだったが…いつのまにか2匹はいて当たり前の存在になった。いや、いなくてはいけない存在になった。


猫を2匹飼ってみると…猫にもはっきりと性格があることに驚かされた。


ふーたんはおっとりしていてスピード感のある遊びではいつもなーたんに押されっぱなし。でも結構賢くておもちゃを投げると追いかけて咥えて戻ってきたり、引き出しやドアをうまく開けたりしてしまう。

人に対しては警戒心がなく、知らない人が来てもぽやーっとしていた。


対してなーたんは警戒心が強くビビり屋さん。いつもせわしなく動いてなんとなくおっちょこちょいだ。

家のインターホンでも鳴って人の気配がしようものなら家具のせまーい隙間に挟まって難が去るのを待つタイプ。


このものすごい正反対な2匹が私は可愛くて仕方がなかった。


幸せな時間が過ぎて…2年前におっとりふーたんは急性膵炎であっという間に逝ってしまった。


なーたん。ビビりななーたん。あなたを入院してさせたり手術させるのがすごい不安だよ。ただでさえ臆病なのに、耐えられるのかな…。でも、元気になるために我慢だよ。すぐに迎えにくるからね。


続く…


里親サイトで見つけたなーたん(左)とふーたん(右)

迷い

先生の腺癌についての説明はこうだった。


治療しないと余命はおよそ2ヶ月。腫瘍を取って抗がん剤治療をしても半年〜一年。

最悪の場合は腫瘍を取った時に癌に覆われた傷口と傷口がつながらずに術後に亡くなる場合もあります、と。


目の前が暗くなった。長くて一年…。あと10年は生きてくれると思っていたのに…。

術後に亡くなる、と聞いて少し躊躇した。でも取らないと腸が塞がって明日にでも亡くなるかもしれない。もうやるしかないのだ。


手術は3日後のと6月10日に決まった。


それまでの間少しでも楽になるように、と、腫瘍の腫れを抑える薬を注射してもらった。


「では、10日の午前中に来てください。」


帰ってきて、私は腺癌についてネットで調べまくった。腫瘍を取ってもたいていは転移していて長くは生きられないこと。たまにだが抗がん剤をうまく使って長く生きられた猫もいること。


たくさんの闘病記も読んだ。猫や犬の病気で苦しんでいるのは私だけではない。動物を家族に迎えた人たちは…いづれどんな形であれ、その子達の病気や死を目の当たりにしなければならないのだ。そう思うと少し勇気が湧いた。


家に帰ってみると、薬が効いたのかなーたんは少し元気そうで、ご飯を出してみると全部とは言わないけど、結構食べた。


家の中を歩き回ったり、私や娘の後をついて回ったり甘えたりする余裕も出てきた。


そんな姿を見て迷いが出てきた。


「ほんとに手術が第一選択なのかな…。」


でも、手術をやめる、とまでは決心できなかった。


この手術までの3日間が…なーたんが自分からご飯を食べたり、元気に私の膝に乗ってきたりした最後の思い出になった。


大好きだったなーたんのおてて

腫瘍

6月7日、昨日食欲増進のお薬を注射したのに、なーたんは昨日から何も食べてない。なんなんだろう。

不安で不安で仕方がない。


改めて検査をしてもらうために、また病院に行った。


この日は血液検査、レントゲン、超音波検査をした。祈る思いで待っていると、先生が奥から少し慌てたようにやってきた。


「腸に腫瘍があるね。どんな腫瘍が調べるために針で腫瘍を取る細胞診検査をしていいですか」


瞬間、背中に冷たいものが走った。


「終わりましたので診察室にどうぞ。ご説明しますね。」


先生が見せてくれた超音波の画像には4センチ大の腫瘍が写っていた。かなり大きい…。


この時点では、先生は細胞診の様子だと癌の中でも「リンパ腫」の方ではなく「腺癌」の可能性が高いと説明した。リンパ腫は細胞診で判明しやすいのだけど、その様相が見られなかったらしい。


食欲がなくなるはずだ。4センチの腫瘍がお腹を塞いでいるためご飯が食べられなくなったのだ。


このままだと腸が完全に塞がって腸閉塞を起こしてしまう。それを防ぐには手術で腫瘍を取った方がいい。


「僕は腫瘍は専門ではないけど手術はできます。もし、希望があれば腫瘍専門のところを紹介することもできますが、紹介だと少し受診できるまでに日にちがかかるかもしれない。でもできるだけ早く手術した方がいいんですけどね。」


確かこんな説明をされたと思う。

腫瘍の専門じゃない、という不安。

でも早く手術した方がいい、という焦り。


焦りが勝ってしまった。とにかく早く腫瘍を取り去らなくては。そう思った。


「手術、お願いします。」


ここが…ある意味ターニングポイントだった。ここで


「少し、考えさせてください。」


と言っていたら何か違ったかな。

もう少し長く元気でいられたのかも。

もう少し幸せな最期だったのかも。


今考えても仕方のないことだけど…


続く…



元気な頃のポンポコリンな、なーたん